家族で10年住んだ家は
幽霊がいた
幽霊はタイムマシンに乗ってやってくる
いまここに
屋根裏に忘れていったメモはそのままだとしたら
タイムホールは生きている
クリップを戸棚の奥へ隠して、
そのことをすっかり忘れてごらん
3匹の猫が私の屋根裏でかくれんぼしていた
そのうち2匹はおいてけぼり
私のベッドの真上で
もう10年は眠っているみたい
***
タイムマシンには
紫のサフィニアと学習机が乗っていた
ごめんねあなたたち
お母さんに任せてしまって
今度は私が幽霊になるわ
一度だけ鍵をつかえたからできたんだもの
***
心臓をどぎまぎさせて、他人面した家をこじ開けると
私の身体は透明になった
左手を壁につけて廊下はおどろおどろしく
足の裏に吸い付く階段は心を閉ざして
ドアノブは平常心で
真っ暗な秘密がひしめいていた屋根裏へ
秘密は家を出るときに必要なくなった
幽霊たちの逃げ場
リビングの窓で鳴き声が聞こえるから
透明になった2匹のねこも屋根裏にあげよう
わたしも過去の幽霊
いまあそこに居るのは未来の幽霊
どうかお幸せに
***
クリップもタイムホールになっていた
私が思い出したときから
でもそれはおばあちゃんの懐かしい家のことだから
あそこには飛行機で飛んでいける場所
時計が支配者
それをくれた人が家を惨めに変えてしまう
おばあちゃんの家のものたちはまだタイムマシンに乗れない
住んでいる人に寄り添っているから
クリップの代わりに
だんだん白く
軽くなって
お願いだからいまのうちにおばあちゃんを乗せていって!
時間はあとすこし
79年分はさぞかし重いでしょうけど
そして答えてほしい
ほんものの抜け殻に、涙していいものかどうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿